最近ではヨーロッパ車やMAZDAのクリーンディーゼルなどが登場し、「ディーゼルとガソリンエンジンってどっちが良いの?」と話題になりことが少なからずあります。
でも、私はこれには少し違和感を感じます。
なぜかというと、ディーゼルとガソリンというと燃料の事と熱サイクルの話が混じっているように思います。燃料なら日本語で言うと軽油とガソリンですね。
私は、大学大学院と機械について学んできました。また、日野自動車でしたので、世に言われるディーゼルの悪しき点だけでなく、ディーゼルのメリットも良く知っています。
まず、内燃機関としては熱サイクルの話をするなら、『ディーゼルサイクル』と従来の一般的ガソリンエンジンなら『オットーサイクル』との比較になります。最近ではガソリンを使ったエンジンは、『アトキンソンサイクル』などと言われるものが増えてきています。
まあ、こんな熱サイクルの話をしても大学で熱力学を学んだ人でないとサッパリわからないでしょうけど。燃焼サイクルについてまとめてみました。
1.燃料と空気の関係
現在ある多くの内燃機関では燃焼する際には空気を圧縮し、燃料と空気(酸素)をバランスよく燃焼させます。理論空燃比はガソリンで14.7と言われています。軽油でも大きくは違いません。ガソリン1gに対し完全燃焼するためには空気が14.7g必要だと言うことです。空気が少ないと不完全燃焼が起こります。つまり加給などが無い場合はシリンダー容量によって燃焼できる燃料の限界が決まります。
2.軽油とガソリンの違い
先ずは引火点から、ガソリンは氷点下30度以下でも引火しますが、軽油は常温では引火点以下です。軽油の発火点は250度ですが、ガソリンは300度と軽油より高くなっています。
熱効率を上げるためには圧縮比を上げたほうが良くなります。しかし、断熱圧縮すると圧縮された空気が高温になります。
昔のガソリンエンジンは、完全に断熱圧縮すると圧縮比12:1で約300度になり、火花で点火する前に異常燃焼が起こってしまうデメリットもありました。そのため、ガソリンでは高圧縮エンジンはオクタン価の高い燃料でないと異常燃焼が起こりやすくなります。
ディーゼルでは温度で自然発火燃焼させるため、圧縮比を約20:1と高くとれますます。そのため、着火しやすく引火しにくい軽油を使ったディーゼル機関は効率が高くなります。
3.熱サイクルの違い
次に、現在主に自動車に使われている熱サイクルを挙げてみました。
★ディーゼルサイクル
断熱圧縮→等圧膨張→断熱膨張→等積冷却
自動車では主な燃料は軽油。軍用エンジンは有事の際に燃料が調達しにくいため可燃性液体なら使えるように設計されていると聞いたことがあります。
★オットーサイクル
断熱圧縮→等積加熱→断熱膨張→等積冷却
★アトキンソンサイクル
断熱圧縮→等積加熱→断熱膨張→等圧冷却
オットーサイクルから圧縮より膨張体積を増やしたサイクル。
サイクル名 | 燃料 | 静粛性 | 効率 (燃費) |
重量 | 製造コスト | CO2 | NOx | トルク | 高回転 |
ディーゼル | 軽油 | × | ○ | × | × | ○ | × | ◎ | × |
オットー | ガソリン | ○ | × | ○ | ○ | × | △ | △ | ◎ |
アトキンソン | ガソリン | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ |
どのサイクルにも共通するのは、吸い込まれた空気をピストンで圧縮する断熱圧縮過程と、燃焼により高圧になったピストンが押し下げられる断熱膨張です。膨張過程は同じ断熱膨張ではありますが若干違います。
ディーゼルサイクルとオットーサイクルとアトキンソンサイクルではの燃焼の差により、等圧膨張と等積加熱に分かれます。これは、ディーゼルが圧縮され高温になった空気に燃料を噴射し燃焼をしながら膨張するのに対し、オットーサイクルとアトキンソンサイクルは混合気に火花で着火することにより爆発的燃焼を起こすため等積加熱である点です。
オットーサイクルとアトキンソンサイクルで違うのは冷却過程です。アトキンソンサイクルは圧縮前の体積より膨張後の体積を大きく取るようにしています。理論的には完全に圧力がなくなるまで膨張させることになります。